Posted on 2017年12月25日
by 河野順一
年明け、今年度中に、新刊を上梓する予定である。
これまで、長年にわたり、
是正勧告と臨検調査についての研究をしてきたが
本書は、その集大成と言っても過言でない。
ブログ読者の皆様には、一足早く、
本書の内容につきお知らせしておきたいと思う。
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政府主導による「働き方改革」の推進や、大手広告代理店従業員の過労自殺や公共放送局記者の過重労働からの心不全による過労死や、
ブラック企業によるブラックバイト問題、そして長時間労働による未払い残業問題など、
近時は労働条件に関する諸問題が、新聞・テレビ等マスコミの話題に上らない日はないといっても過言ではない。
ここで、「働き方改革」の重点項目である長時間労働の是正について注目しよう。
平成29年3月、「働き方改革実行計画」に示された「罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」に関する、基本的考え方によれば、
「我が国は欧州諸国と比較して労働時間が長く、この20 年間フルタイム労働者の労働時間はほぼ横ばいである。
仕事と子育てや介護を無理なく両立させるためには、長時間労働を是正しなければならない。働く方の健康の確保を図ることを大前提に、
それに加え、マンアワー当たりの生産性を上げつつ、ワーク・ライフ・バランスを改善し、女性や高齢者が働きやすい社会に変えていく。」とある。
ご説御尤もである。すべての国民が、健康で文化的生活をすることができるよう、働き方の枠組みを是正することは、憲法が要請するところである。
では、法改正にどのような方向性を持たせるかというと、同計画は、
「現行の時間外労働の規制では、いわゆる36協定で定める時間外労働の限度を厚生労働大臣の限度基準告示4で定めている。
ここでは、36協定で締結できる時間外労働の上限を、原則、月45 時間以内、かつ年360 時間以内と定めているが、罰則等による強制力がない上、
臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して特別条項を設けることで、上限無く時間外労働が可能となっている。
今回の法改正は、まさに、現行の限度基準告示を法律に格上げし、罰則による強制力を持たせるとともに、従来、
上限無く時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を設定するものである。
すなわち、現行の告示を厳しくして、かつ、法律により強制力を持たせたものであり、厳しいものとなっている。」と示している。
なるほど、現行法においても、一応、長時間労働を抑止すべく、36協定が存在していたが、
これには罰則規定が定められていなかったことから、実質、上限無く時間外労働が可能となっていた。
よって、今度の法改正で、上限を超えた場合の罰則規定を盛り込み、現行の告示における労働時間の上限を法律に格上げし、
強制力を持たせることで厳格する、これをして長時間労働の抑制を実現させるという方針のようだ。
確かに、労働時間の上限が法に明記され、それを超えた場合に罰則規定が適用されるとなれば、事業主はこれまでのように安易な労務管理ができなくなる。
長時間労働への、抑止力は期待できることだろう。
しかし、現状の労働基準監督行政に照らしたとき、一抹の不安がよぎる。
それというのも、安直に「所定の労働時間の上限を超えたら、罰則規定を適用する」といっても、労働時間の中身は簡単に把握できないからだ。
労働時間とは、労働者が使用者の指揮監督下にあり、労働者が労務を提供した時間のことを指す。
では、「使用者などの指揮監督下で、労働者が労務を提供した時間」であるか否かは、どう判断するのだろうか?
労働契約に定められた所定労働時間においては、特段な事情がない限り、労働時間であることが推定される。しかし、終業時間を超えた時間外労働に関してはどうだろうか。
今、労働基準監督行政において、そうした時間をタイムカードの打刻時刻、あるいはパソコンのログデータ等によって判断しようとする傾向がある。
こうした扱いは、正しい労働時間が反映されているのかと言えば、残念ながらそうではないといえる。
その理由は、本文に詳述しているものだが、このように不正確な方法を用い、企業は時間外労働における未払い残業代の支払いを命じられること是認してはいけないのではないか。
そもそも、処罰される側の企業は、未払い残業代の支払いを命じる労働基準監督官は、どのような権限のもとに職務権限を行使しているのかを、十分に知っておく必要があるのではないか。(続く)
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