Posted on 2020年12月25日
by 河野順一
似て非なるものに、「契約」と「約款」がある。
「契約」とは、複数の者の合意によって
当事者間に法律上の権利義務を発生させる制度である。
合意のうち、
法的な拘束力を持つことを期待して行われるもののことで、
雇用・売買・所有 等に関して行われる。
契約は、当事者が対等平等な立場で、
自由に契約することができるのが特徴だ。
契約を締結するか否かを選択する自由がある。
(これは、さらに申込みの自由と承諾の自由に分けられる。)
また、契約の相手方を.誰にしても構わない。
さらに、公序良俗に反しなければ、
どのような内容の契約を締結してもよい。
最後に、どのような方式で契約を締結してもよい。
他方、「約款」や利用規約も契約の一種だが、
先に説明した通常の契約のように交渉や、修正がない。
具体的には、電気・ガスの供給約款、
銀行預金の規程、保険約款も、
鉄道運賃に関する規定等がそれにあたる。
何故こうした約款が存在するかといえば、
いちいち、不特定多数の人々と、膨大な量の契約を
本来の契約と同じように交渉や修正をしていたら、
事業の迅速性、利便性をくからである。
例えば、鉄道運賃に関していえば、
横浜から東京までの運賃が高すぎるから、
私は払いたくない…契約に応じられない…
等と人々が言い出したら、収拾がつかなくなるということである。
だから、サービスを提供する会社側が提示した条件で、
一方的に契約の効力を発生させてしまうというものである。
ただし、こうした約款も、
企業側が、一方的に決めることができる特別な契約であることから、
民法548条の2 第2項は
「規定にかかわらず、同項の上項のうち、
相手方の権利を制限し、
又は相手方の義務を加重する条項であって、
その定型取引の態様及びその実情
並びに取引上の社会通念に照らして
第1条第2項に規定する基本原則に反して
相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、
合意をしなかったものとみなす。」
と、利用者の保護規定を置いている。
いずれにしても、約款でない本来の契約は、
複数当事者が対等平等の立場で、
契約の内容を吟味したうえで、合意することができる。
その内容が嫌なら、契約しない自由があるということになる。
契約の内容は非常に大切であり、
その隅々まで、よく読み、相手方との合意を形成すべきである。
「権利の上に眠るものは保護に値せず」
法律は絶えず勉強であり、実践である。
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