Posted on 2025年3月22日
by 河野順一
インド仏教徒1億5000万人の頂点に立つ“日本人僧” 佐々井秀嶺84歳とは一体何者か?(白石 あづさ)
日本の人口をご存じだろうか。
2025年(令和7年)3月1日現在、総務省の統計局によると、
1億2,344万人である。
1億5000万人の信者がいるということは、
日本の全人口をしてもまだ足りない数である。
その頂点を極めるインド仏教のトップは、日本人(正確には、だった)の佐々井秀嶺氏だ。
この記事は6年前のものだから、現在は90歳になられている。
世界を動かす5人に数えられる氏の名声は、
日本でそれほど高くないというのが驚きである。
むしろ、近年では、東大を出て、
100億円の年商があったIT起業家が、
108万円(108は煩悩の数)だけ手にして、佐々井秀嶺氏に弟子入りした、
小野裕史さんのほうが、扱いが大きいかもしれない。
最近、精神科医の香山リカ氏との対談
「捨てる生き方」が話題になっている。
しかし、小野裕史さんにスポットが当たることで、
師匠の佐々井秀嶺氏の活躍が、ますます注目される。
底辺から生き方を模索し、1億5000万人の長に上り詰めた人物と、
50歳を直前に、その生きざまに衝撃を受けて、
突如仏門に入り、資産、社会的地位、名声を捨てた人物。
全く異なる立ち位置から、仏道を目指す僧侶らの生き方は
興味深い以外の何物でもない。
それも舞台は日本ではない。
インドは仏教発祥の地、お釈迦様が、その教えを広めた地である。
時代とともにヒンドゥー教が台頭し、仏教徒はその数を減らしていった。
ヒンドゥー教には生まれながらの差別的な階層である、カースト制が存在する。
その制度において、「不可触賤民」は最下層にも入れない、
他の階級が触れることすら卑しいとされる、彼らは、いくら努力しても、
この世で人たるに値する最低限の生活が保障されない人たちだ。
総数は約2億人と推計されている。
この人たちに、差別制度を無くすべく、
佐々井秀麗上人は、仏教への改宗を促した。
人々に生活の向上と、治安の良さと、希望を与えた。
上人が初めてインドの地を訪れた際、
数十万人しかいなかったインド仏教の信者は、
約半世紀後の現在は、1億5000万人である。
如何に偉業であるか、数字が語る。
信者は上人の姿を認めると、すかさず近寄り、
跪いて頭を垂れて何度も崇める。
まるで、生き神様である。
日本人が、何のつてもなく単身インドに渡り、
仏教発祥の地で、仏教を再興する。
凡夫には望むべくもない偉業である。
そして、その意志が、次の世代に受け継がれていく。
1億5000万人のトップであれば、
さぞ裕福な暮らしをしているかと思いきや、
上人の場合は対極だ。
清貧の志を、地で行っている。
住まうところは、狭い部屋に生活必需品がぎっしり詰まっており、
高齢で横になることが多い寝床は、人々の相談時に、面談室に早変わりする。
時に厳しく指導し、子供や、困った人に寄り添う優しさと笑顔は、格別であり、
これまで培われたいぶし銀である。
知れば知るほど、その生きざまに惹かれる。