Posted on 2023年5月15日
by 河野順一
揺れる700年の伝統 三重・桑名の「上げ馬神事」は動物虐待か(産経新聞)
まずは、「伝統」と「文化」の違いから。
「伝統」とは、
「ある民族や地域などでで、長い歴史の中で伝えてきた信仰や風習、
しきたりや制度などのこと、それらを受け継ごうとする精神」をいう。
他方、「文化」とは、
「人間が関わることで形成してきた環境」
「衣食住や技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など、生活に関わるもの全て」をいう。
今回の「人権」ならぬ「馬権」は、前者になる。
時代とともに、人々が良しとする価値観が変わる。
よって、その価値観が変わる中で、伝統に修正が加えられることはある意味、当然といえる。
現代において、動物愛護の精神が「良い」か「悪い」か
という視点に立った時、
「悪い」という人はいないだろう。
それでは、食「文化」の中で、動物愛護の観点から、
「ステーキを食すことは悪だ」「フライドチキンは動物愛護に反する」
になるかといえば、「いたしかたない」として是認しているのではないか。
要は、人を中心にして、どちらの方向性がより自分たちにとって有益かの判断に落ち着く。
さらに文化も、異なる文化、
つまり一般的か、限定的かの判断により、その有益性の判断が変わる。
その好例が、「鯨」だ。
食「文化」として根差している我が国にとって、
「鯨」は食材であり、動物愛護の対象外だが、
食の風習がない欧米各国にあって、それは対局の位置づけである。
よって、今回の騒動も、神事を継続する必要性を考えると、
どうやらその他大勢の意見が勝り、
廃止の方向に向かう公算が高いと思われる。
「伝統」と「文化」のはざまにあって、
要は、最大多数の最大幸福、人間のご都合主義によるということに尽きる。
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