Posted on 2021年2月26日
by 河野順一
派遣社員への通勤手当不支給「不合理と言えず」 大阪地裁判決(毎日新聞)
この4月から、中小企業も「同一労働同一賃金」がスタートする。
昨年10月、5つの最高裁判例が出され、今後の指針が示されたわけだが、
各企業における取り組みは進んでいるのだろうか。
その4月を目前に、通勤手当に関する大阪地裁の判断がされた。
これをどう読むかである。
額面通り、「派遣社員への通勤手当不支給」は、「不合理と言えず」と読み、
今後、通勤手当を支給しない運用をしてよいとするのか…
先に出された最高裁判決との整合性を考えるに、
そうばかりとは言えない。
その理由はこうだ。
派遣先までの通勤費は、正社員であろうが派遣社員であろうが、
かかるものはかかる。それが大前提である。
それを、正社員だけに支給するというのは、
最高裁の判断を待たなくても、やはり不合理だろう。
しかし、今回はお目こぼしに預かった。
なぜか?
それは、本件では、交通費の不支給が派遣社員との合意の上での契約であり、しかも過去の出来事である。
現在この会社は、派遣社員にも通勤費を支給し、改善しているということだ。
格差是正に向けて、企業努力していることが評価された形と判断するのが妥当だ。
企業が格差是正に対して、こうした努力をしているにもかかわらず、
過去にさかのぼって合意事項をひっくり返すことは、
私的自治の原則に反するし、法的安定性も害する。
よって、この判決の結果だけを受け、これから将来に向けて、
「正社員には支払うが、派遣社員は通勤手当が不支給」
の扱いはNGと考えることが無難だ。
裁判は、結論ではなく、
判決の理由が大切だと言われる所以はここにある。
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