Posted on 2023年11月26日
by 河野順一
母を捨てるということ(おおたわ史絵 著)
あらすじ…アマゾンから
「異常なほど娘に執着した母親。
幼い頃から常に母の機嫌に振り回され、常に顔色をうかがいながら育ってきた。
やがて母は薬物依存症に陥る。
「いっそ死んでくれ」と願う娘と「産むんじゃなかった」と悔やむ母。
母に隠されたコンプレックス、そして依存症家族の未来とは。
医師として活躍する著者の知られざる告白。」
一気に読んでしまった。
著者の知られざる人生に、深く共感した。
想像を絶する半生を送ってきた中、
よく、道を踏み外さず、医師になり、今日の活動をされていると思う。
偏に、感動である。
ヤングケアラーの存在が明らかになって久しいが、
彼女がそれを担っていた頃、その概念すらなかったのではないだろうか。
医師の父にしても、薬物依存の母に対して、正しく向き合うことができず、
仕事と、妻の対応に日々疲弊していた。
これは、著者一家の歴史にとどまらず、
依存症に苦しむ、数多の本人・家族の参考となる良書である。
家族が依存症になったとしたら…
なかなか相談できるシステムがない。
未だもって、「依存症」は社会の問題ではなく、
個人の問題であり、家族でケアすべき課題であるとの位置づけがされている。
「依存症」のみならず、「痴呆」、「DV」、「ひきこもり」、「メンタル」、
これら、誰の身にも起こりうるリスクである重大課題に、
法も、政治も、後追いばかりで、現実に追いついていない。
社会がうまく機能していない。
著者は、自身の体験をもとに、社会のスキーム改善を訴える。
薬物依存にしろ、アルコール依存にしろ、
「依存症」患者の特徴を6つにまとめる。
1 自己評価が低く、自分に自信が持てない
2 人を信じられない
3 本音を言えない
4 見捨てられる不安が強い
5 孤独でさみしい
6 自分を大切にできない
誰もが多かれ少なかれ持ち合わせる、心の負の部分である。
その強弱が、依存症に向かわせるか、阻止できるかの要ではないか。
人は誰しも平等であるべきだが、
生まれた環境、生育環境、もって生まれた身体的特性など、
差が生じるのは周知の事実である。
よって、負とされる部分を、いかに不屈の肯定感をもって凌駕できるか、
すなわち自己肯定感を強めて、幸せをつかめるかが、
その人の人生の課題であり、試練である。
そして、その頑張りに寄り添い、後押しをするのが、教育であり、
社会的なセーフティーネット網の拡充である。
今、不足していることを一足飛びに解決するのは不可能であるが、
人々が前向きに、成熟した社会を目指す、意識を持つことが肝要だ。
著者の勇気ある告白に、心が揺さぶられる。
現状認識のうえで、
同じ悩みを持ち人が多いことを共感でき、救われた人も多いと思う。
強く思う。「依存症」を、個人と、家族の問題にしてはならない。
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