ルポ 電王戦―人間 vs. コンピュータの真実 (NHK出版新書 436) [新書]
この本は将棋に興味のある方なら、誰でも面白く読めるだろう。
将棋に興味のない方でも、将棋を全く知らないというのでもない限り、やはり面白く読めるのではないか。
最近では、大学教育に将棋を取り入れている学校もあると聞く。
若手の憲法学者で、このブログでも何度か著書を紹介したことのある木村草太氏は、法的思考力を育てるために将棋を利用している。
社会保険労務士にとっても、将棋の思考は有用だろう。
盤面をにらみつつ、自分だけでなく相手の出方を予想する…
これは使用者側・労働者側、双方の立場を考えつつ労務管理を担当する社労士にとって、格好の思考訓練の場になるだろう。
話を本書に戻そう。
著者は将棋の「電王戦」のルポを、非常にわかりやすい筆致で描いている。
人間対コンピュータの戦いである「電王戦」だが、コンピュータの裏側には将棋ソフトの開発に打ち込んだ人間達がいる。
その意味では、「電王戦」もやはり人間対人間の戦いなのである。
プロ棋士、それも九段という棋士達がすでにコンピュータとの対局で敗れている。
いずれ、現役の名人や竜王の実力をコンピュータが凌駕する日も来るのかもしれない。
いや、その日は必ず来るだろう。
だとしたら、人間とコンピュータの実力が拮抗しつつある今こそが、トップ棋士の出番として最適の時期なのではないだろうか。
個人的には羽生善治四冠とコンピュータの戦いをぜひ見てみたい。
どちらが勝っても負けても、将棋に人生を賭けた「人間」の価値は下がることはない。
まさに「人知を尽くした」戦いが見られるはずだ。

