兵庫県内部告発文書と、つながらない権利

兵庫県知事のパワハラなど、元幹部職員男性による
文書による告発問題は、法で腕大きく取り上げられ、
皆様の記憶に新しいところだと思います。
同知事は、結果失職され、現在、出直し選挙のため、該当演説を精力的にされているとのことです

さて、この幹部職員が告発した内容は、報道によれば次の7つでした。
①副知事(当時)が「ひょうご震災記念21世紀研究機構」の五百旗頭真理事長(故人)に、副理事長2人の解任を通告し、理事長の命を縮めた。
②前回知事選で、県幹部4人が知人らに知事への投票依頼などの事前運動を行った。
③知事が24年2月、商工会議所などに次の知事選での投票を依頼。
④視察先企業から高級コーヒーメーカーなどを受け取った。
⑤副知事(当時)らが商工会議所などに補助金カットをほのめかし、知事の政治資金パーティー券を大量購入させた。
⑥23年11月の阪神・オリックス優勝パレードの資金集めで、副知事(当時)らが信用金庫への補助金を増額し、企業協賛金としてキックバックさせた。
⑦複数のパワハラ。
「20メートル手前で公用車を降りて歩かされ、どなり散らす」
「気に入らないことがあると机をたたいて激怒」
「幹部のチャットで夜中・休日など構わず指示」など

残念ながら、これを告発した県幹部の方は、7月に自死されています。
それゆえ、事実はもとより、その調査方法など、
知事の責任の所在を大きく問われているものです。
本日はこのうち、最後の⑦、「複数のパワハラ」について、
考えてみたいと思います。

⑦の具体的事例のうち、最初の2つに関しては、
正確な状況がつかめないので、パワハラか否かの判断がつきかねます。
責任の所在を判断する際、背景、職務との関連性、
そして「怒鳴り散らす」や、「激怒する」は、程度もあるため、
労働者の主張を鵜呑みにするのは禁物です。
そのあたりを、対立する当事者双方から公平中立の立場で
事情を確認する、
また、周囲にいた人からの事情聴取をするといった
客観的な判断材料の収集が不可欠です。
今、兵庫県ではこの点につき、
百条委員会にくわえて第三者委員会で検証を行っています。

問題は、「幹部のチャットで夜中・休日など構わず指示」です。
所定労働時間のほかは、原則として労働者の私的な時間ですから、
使用者としては、そのような時間につき、
労働からの解放をしなければなりません。
よって、災害などの緊急時はともかくとして、通常業務の延長として、
「幹部のチャットで夜中・休日など構わず指示」はNGと言えます。
これを「つながらない権利」と呼び、今、世界的な動きとして
クローズアップされています。

この「つながらない権利」は、
2017年にフランスが施行した改正労働法で世界的に注目され、
イタリアやメキシコ、英国など世界各国で法整備が進んでいます。
例えばフランスの場合、従業員数50人以上の企業を対象に、
業務時間外の「つながらない権利」に関する定款の策定が
法令で義務づけられました。
イタリアもこの権利を雇用契約に
明記することを義務づける法律を制定しました。
21年にはカナダの一部州で
つながらない権利を尊重するための法改正が行われ、
メキシコは「テレワーク法」で
つながらない権利の尊重を使用者に義務化したといいます。

では、日本は?
今のところ法制化に向けた動きには至っていません。
だからといって、将来的には、
世界的な潮流に逆らうことはできないでしょう。

ちなみに、2021年に厚生労働省は
「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」
を発表しました。
このガイドラインには、「つながらない権利」に関連する
次のような記載があります。

・テレワークを実施している者に対し、
時間外、休日または所定外深夜のメールなどに
対応しなかったことを理由として
不利益な人事評価を行うことは適切ではない。

また、テレワークにおける長時間労働の対策として、
以下のことが例示されています。

・業務時間外にメールを送付することを抑制する。
・所定外深夜・休日は社内システムのアクセス制限を設定する。

こうした背景に鑑み、罰則規定が導入される前に、
来るべきその日に向けて、
企業での「つながらない権利」について
見直しをしておきたいものです。

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