ベートーベンの、交響曲第5番「運命」に号泣す

交響曲第5番「運命」は、ベートーベンが「運命はこう扉を叩く」と述べたという。これは、彼の晩年の秘書であったアントン・シンドラーの伝えるエピソードによる。この交響曲の特徴は、「暗から明へ」あるいは、「闘争から勝利へ」というドラマチックな展開にある。

 第1楽章の苦悩に満ちた闘争から、第4楽章の勝利の喜びに至るドラマトゥルギー(作劇法)は、それまでの交響曲にはないものと言われている。

 彼は、この交響曲のシンボルというべき「運命の動機」・・・「ジャジャジャジャーン」によって、4つの楽章を有機的に展開させ、全体を通じて「暗から明へ」そして闘争を経ての歓喜へ至る結実に成功を収めた。どんな苦難も、自分がそれを真摯に受けとめ、強い意志を持ち立ち向かえば、必ずや道が開けるといったストーリー展開を髣髴とさせる。

 ベートーベンは、この作品において、第3楽章と第4楽章をつなげるという大胆な試みを行った。全曲を通じて描かれる、闘争を経て至る歓喜へのすき間ない楽曲に、何度聞いても心酔して、せりあがるフレーズ展開、オーケストラが奏でる重層的な音の洪水に、私は小舟の如く歓喜の渦に圧倒されつつも、心地よく身を委ねる。

 これが、ベートーベンの、交響曲第5番「運命」である。

Comments are closed.