内部告発等を契機とした職場いじめと会社の法的責任(明るい職場応援団)
トナミ運輸事件(富山地判平成17.2.23)
この判例は、内部告発のにおける、
不利益処分に関するリーディングケースとなる事件である。
資料として読んでしまうと、なかなか親近感がわかないが、
再現映像として視覚的に訴えた番組を見て、
「正義がいかに犠牲を払うか」、深く腑に落ちた。
事件の詳細は、厚生労働省が運営するサイト、
「明るい職場応援団」に譲ることとする。
昨日放映された、「アンビリーバボー」
は、この判例の原告である男性が、78歳になった今を語るシーンを含め、
31年間、会社の不正を告発しつつ、閑職に追いやられても主張を曲げずに、
定年退職まで勤め上げた経験を、再現映像で仕上げていた。
過酷である。
ビジュアル化されると、より切実である。
周囲と隔絶された職場環境におかれ、仕事は取り上げられ、
ただひたすら、草むしりを命じられる31年間。
暴力団を使ってまで退職が強要されるなど、
受けた精神的苦痛は、当然に受忍の限度を超える。
何年たっても昇給はされず、平社員のまま経済的にも窮地に追いやられる。
正義を正しく主張するために、
本人は勿論のこと、それを支える家族も、大変な忍苦を強いられた。
そして、定年を5年後に控えた55歳当時、
二人の子供が、大学を卒業したことを機に、会社提訴に踏み切った。
そして、勝訴し、会社に約1047万円損害賠償を認めさせた。
しかし、31年という長きにわたる、
嫌がらせの穴埋めをするには、決して多くない金額だ。
翻って、「公益通報で報復の法人に3千万以下の罰金、決定者に拘禁刑も 政府案」
本日の、朝日新聞に見出しが躍る。
確かにトナミ運輸事件のような場合、会社の責任は重い。
この判例を端緒として、公益通報保護法も施行された。
しかし、本来、雇用の契約は、
民事で解決すべきなのではないかとの疑問が残る。
確かに、立場を利用した、行き過ぎた公益通報者への報復は、信義則に反する。
報復される人を見れば、周囲が内部告発をした場合、
自分も同じような目にあうのではないかと、
委縮するのは当然だ。
刑罰を科すことには、会社への抑止力が働く。
しかし、「公益通報で報復」に刑罰を適用するのではなく、
その手段において、刑法を科すことはできないのだろうか。
例えば、労働契約と異なる、義務なきことを、長期に反復して命じれば強要罪、
退職を強く迫れば、強要罪・脅迫罪。
「公益通報で報復」と表現すると、会社の悪意が明々白々の場合とみてとれるが、
反対に労働者が悪意を持って公益通報に名を借りて通報する、
告発事実がグレーゾーンで、労働者が曲解・誤信して行った通報の扱いなど、
会社が経営に必要な判断まで、過大に消極化させる、
過度な抑止につながらないのだろうか。
悪質な会社もあるが、
悪質な労働者がいることも視野に入れなければならない。
刑罰は、人権を制限する国家の強制力である。
その適用については、限定的に、かつ慎重な対応が求められる。
